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日常カテゴリは鬱々とした暗いものが多いのでご注意をば…


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恐いといって泣いた
僕は汗だくで走りながら
恐いといって泣く人形のような人の波を通り過ぎた

意識が 朦朧とするんだ

他者に感情があるなら
どうして僕にはそれがわからないんだろう
みんな人形なんだ
中身なんて空っぽで
首をへし折っても命はなくならない
だって、もともとないんだから

そうやって生きていくんだ
これからもいままでも

それがどれ程異様で奇妙で悲劇的なのか
僕にはわからない
他者が きっとそう思うだけだ

無表情で泣き続ける人形たちが勝手に決めてくれる

僕は汗だくになって走りながら
赤い水の海に横たわり
無残に破壊された人形を ちらりと眺めた


轢き逃げよ
人形のひとりが叫ぶ
走り去った車はとうに見えない
黒い車だった


今日も 何事もなく過ぎていく
僕は走る
逃げるように…
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指を硝子越しに合わせてあなたは言った。

「割れないね」

薄い膜みたいな硝子越しにあなたは笑った。
その笑顔が歪んで見えるの。
悲しいね。

「割ろうとしないからよ」
「そうなのかな」

あなたは綺麗な笑顔をつくって首を傾げた。
指先だけを合わせて、見つめあう。

「それなら…」

傾いた顔の整った唇が動く。

「どうして君は割らないんだい?」
「………」

ほんの少し力を籠めれば、硝子はいとも容易く皹入って、あなたの顔を更に歪ませるだろう。
そう。
この指先に、ほんの少し。

「割れたら、あなたが困るからだわ」

だから、わたしは待っている。
あなたが割るのを待っている。
でもあなたはそうしない。
解っていても、見つめあう。

「…君はマゾだよね。僕はそんな君が大好きだ」
「知ってるわ」

突き放すように、言った。
クスリと笑ったあなたは反対側に首を傾げた。
不自然な微笑み。
寒気がするほど気持ちの悪い微笑み。

「頭の良い君は、嫌いだ」
「奇遇ね。わたしもよ」

ゆっくりと、あなたに合わせて首を傾ける。
あなたはわたしに何を求めるの。
わたしはあなたに心を求めるの。

「…わたしとあなたは、ある意味同類なのよ」
「…違いない」

舌を出してみせれば、呼応するようにあなたの紅い舌が硝子をなぞる。

「どっちが先に、壊れるかな…」

伝う唾液、声に揺れる硝子。
歪んでいく。

だってわからないんだ

雨が
降ってきて
もう時間がないよって

でもわからないんだ

この真っ赤の掌に何をつかんでいたというんだろう
失ったことを知らなかった
消えていたことに気付かなかった
流れ続けていたんだって
わからなかった

ねぇ、だからもうさようなら

君とはこれきり

ねぇ、だからもうさようなら

でも、また会おうね
フラリとどこかで
会おうね

だからもうさようなら
どうしたって変らないんだ
この耳をすり抜けていく声はただそれを予感させるだけで

現状はどうしたって現実なんだ
だから君はもっとうまくやらなくちゃ
僕はそれをいま放棄してる
たとえば心だったり、忙しさだったり、ヒトだったりするんだけれど
もうそろそろ血に埋もれてみないか?

変れと言うんだ
このままじゃダメだって
忙しなく僕を追いたてるんだ
もう逃げられないよ

こんなに短い袖に身を包んでも

どうしたって変らないんだ
変れないんだ

たとえば君が僕を恐れるのなら
全ては叶わぬ夢なのだろう
自分の浅ましい姿を見たいと思わないかい?
それこそ最高の快楽さ

だから、まだ死なないで

削り落とされたその声の
断片を僕は知らない

だから、まだ死なないで

どうか生きていて



material by 青の朝陽と黄の柘榴

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